報告 No.16 2005年2月〜2011年3月
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No.15 の報告から6年が経ちましたが、その間、私たち・桜の森を守る会は活動を続けてきました。ここに現在までの経緯を、項目別、あるいは時系列で報告します。 2005年2月、横浜市はカーボン山を公園化することを決め、当時の土地所有者であった(株)大京から2009年度までに分割して買取り、菊名桜山公園(仮称)として整備することを決定しました。2002年、中田市長が就任してから庁内の組織改編があったため、公園や緑地を管轄していた緑政局は環境創造局と名称を変更し、公園の整備は環境整備部緑事業課(後の公園緑地整備課)が担当することになりました。 最初の整備工事は2006年(平成18年)に始まり、5回の工事を経て2010年に終了し、4月には公園として全面開園しました。更に、トイレ棟が2011年3月末に完成し、今年4月1日から利用できるようになりました。このトイレ棟の建設にあたっては、私たちと市との5年にわたっての長い交渉・話し合いがあり、まさに「たかがトイレ、されどトイレ」というドキュメンタリーとして記録しておきたいような経過がありましたが、これは「住民参加の公園づくり」の先例になると自負しています。 そして、2001年の最初の活動から10年、様々な紆余曲折がありましたが、公園化に尽力して頂いた横浜市の職員の方々、ご支援を頂いた地域の方々、そして横浜市民の皆様に感謝の意を表したいと思います。 ●菊名桜山公園整備工事一覧
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2006年の1月、篠原地区連合自治会の青木会長と菊名地区連合町内会の金子会長に相談し、ふたつの連町の中から6名の委員を選出して頂き、桜の森を守る会からは私を含めた4名が委員になり合計10名の委員で公園整備基本計画部会を立ち上げました。そして、市の緑事業課の担当者と篠原地区会館で、公園整備計画について何回となく協議をいたしました。また、桜の森を守る会の4名の委員でこれも必要に応じて、何回となく関内にある市庁舎の緑事業課(後の公園緑地整備課)へ話し合いに行きました。 また、市の担当者は2年か3年で人事異動のために替わりますが、2006年から2011年までの間には3名替わりました。このことは私たちへの対応に少なからず影響を与えましたが、私たちは終始一貫した考え方や方針で協議に臨みました。 しかし、市の計画はどうしても過剰にならざるを得ない事情がありました。都市公園法や横浜市公園条例などによる安全基準や設置基準は、当然遵守しなくてはなりません。また、行政は公園の隣地の方々に配慮することが多く、隣地付近にある樹木は伐って欲しいと言われれば伐らなければなりませんし、擁壁などは堅牢性を優先したコンクリートで固めたものになります。たとえば、公園西側部分の旧綱島街道沿いの擁壁工事にあたっては「緑化ブロックでお願いします」と要望し、緑事業課でも了承した筈だったのですが、その部分は緑事業課には権限が及ばない道路局の管轄であり、結果的には全面コンクリートで固められたものになってしまいました。その様な事情があったのであれば、私の方で「道路局へ直接要望しておけば結果は違っていたのでは」と後悔しましたが、このことは市民と行政のコミュニケーションの難しさを痛感することにもなりました。 また、市の整備案では、全ての遊歩道に柵を取り付け敷地境界には全てフェンスを張り巡らせることになっていましたが、最低限必要なところだけにして欲しいと様々な提案や交渉を行いました。結果的に、ある程度の樹木の伐採や過剰と感じられる整備を受け入れざるを得ませんでしたが、私たちは「住民参加の公園づくり」にこだわり続けました。 横浜市との協議の中で感じたことは、よく言われることですが、行政は「前例がない」ことには踏み込まないというか逡巡してしまうことです。それを行政の方々に突破していただくためには、市民サイドも責任を負うことを覚悟し、何でも行政のせいにしない市民自体が自立するという気概を見せることが大切です。そうすれば、行政も安心して踏み出すことができ、前例を超えて旧弊を変革できることが可能になると私は信じています。 このトイレ棟については、まさに「たかがトイレ、されどトイレ」という議論から始まりました。この公園は横浜市の基準からトイレの設置が必要でしたので、市の公園整備計画には当然トイレの計画が盛り込まれていました。市主催の説明会では、地域住民の方々から「公園になるのだからトイレが必要だ」という意見と「ホームレスなどが居着くことが心配だ」といった対立する意見がありましたが、整備基本計画部会で検討した結果は「遠くから来園される方々が増えることが予想されるので、やはりトイレは必要」という意見が多数をしめました。そして、この時点でのトイレの設置場所については「公園の真ん中にポツンと置くのではなく、なるべく人通りが多い場所の方が、人目について安心なのではないか」ということになり、公園東側のマンション前に設置することになりました。 ところが、マンションの住民や近隣住民から反対意見が多数寄せられ、私が説明をしなくてはならない状況が続きました。「公園になったことはありがたいことだが、トイレが近くにあるというのは嫌だ」というご意見は「公」より「私」を優先する現代社会の風潮からしても、従来からの公園のトイレのイメージからしてもしかたがないことかもしれません。 そうした中、「このトイレをある程度賑わいがある空間と一体化すれば旧来からの公園のトイレのイメージを払拭できるのではないか」というアイデアが整備基本計画部会のメンバーから提案されました。そして、この提案は、カーボン山の公園化への活動がカーボン山周辺に小さいながらも新たなコミュニティを創り出していたことと、その継続的な発展の場を創り出してゆくことに合致したものでもありました。そこで、整備基本計画部会は、その施設を自主的に運営することを前提にして、具体的な施設を外部の建築家の協力を得ながら計画することにしました。 この時に計画した施設は、少人数の会合や日曜教室等を開催できるカフェの様な空間にトイレを併設したミニコミュニティハウスの様な施設です。具体的にはレンタルスペースとカフェ、そしてトイレの3つの機能を備えた環境に開放された施設で、これを私たちは「交流スペース」と呼び、この計画に相応しい形状の建築物「グラスハウス」(米国の建築家・フィリップ・ジョンソンの作品。コネチカット州在)を参考例とした要望書とパンフレットを作製し横浜市に提出しました。 また、「この施設でどの様な利用が考えられるのか」について近隣の団体にヒアリングを実施しました。菊名保育園、菊名愛児園、港北小学校、菊名小学校、大口台小学校の放課後キッズクラブ・ぱれっと、それに子育て支援拠点・どろっぷの6者に07年から08年にかけて行い、カーボン山感謝祭では一般の公園利用者を対象とした提案書の展示とアンケートも実施しました。 この施設についての多くの方々の反応はかなり好意的なものでした。しかし、横浜市の反応は「管理者のいない公園にこの様な施設を設置した前例はなく、今後も考えられない」とのことでした。また、私たちが施設の計画と平行して行ってきた事業計画からも、自立した運営体制でレンタルルームやカフェの運営は困難であることが明らかになっていました。 そうした困難な状況の中、横浜市からトイレにあずまや(東屋)を併設することであれば可能だということが提示されました。 そこで、私たちは以前の計画案を抜本的に見直し、建物の3方がシャッターで開閉可能なガレージの様な空間とトイレや公園愛護会用倉庫・飲料自販機置き場を一体化した「あずまや」を計画しました。そして、この計画案を市に提案したところ、今度は横浜市もこの案であれば実現可能ということになり、前向きに検討していただけることになりました。 建物の平面計画は、防犯性を考慮して、どこからでも見通しのよいものとし、建物の配置も公園の中心として物陰や裏側ができない様にしました。また、建物の屋上は環境に配慮して緑化し、雨水の貯留タンクも設置しました。この雨水は日頃の草花への水やりに利用する予定ですが、災害時のトイレでの利用も可能です。 トイレ棟の開閉については、公園愛護会(桜の森を守る会)が責任をもつことを前提に、どのようなローテーションで行うかを定例の会合で具体的に検討を重ねました。また、日々のトイレの開閉を住民が行っている公園の事例を市に調査していただき、そこの公園に行き愛護会の会長さんに話を伺いました。会長さんがお一人で開閉をおやりになっていることには驚きましたが、私たちは5人ほどでローテーションを組んで朝夕の開閉を行うことに決定し、その旨を市に伝えていましたが、最終的には横浜市が警備会社に委託することを表明しました。 この電源の問題については、これまで毎年春と秋に行ってきたお祭りに加え、これから開催してゆく様々なイベントの利便性を高めるために公園愛護会用のコンセントの設置を公園愛護会が電気料金を支払うことを前提に要望してきました。 私たちは休憩スペースとその前のテラスに公園利用者の方々が自由にくつろぐことができるテーブルや椅子等の家具を常備しておくことを考えていました。無論トイレ棟は横浜市の公共施設ですから、備品は愛護会が購入することを前提にこのことを市に相談しました。当初の市の反応は「移動可能な椅子を常備することは、それを乱暴に扱って怪我をする人がいることが想定され、テーブルや椅子を積み重ねてそれに登る人がいる可能性もある」ということでしたが、最終的には「愛護会が責任を持って管理をするのであれば、」という回答をいただきましたので、テーブル2脚と椅子6脚を購入することにしました。 横浜市のほとんどの公園には公園愛護会があり、市から公園管理の一部を任されて草刈や清掃などを行っていますが、私たちも2009年に「菊名桜山公園愛護会」の結成届けを市に提出し、愛護会規約を定め私が会長を引き受け、他に副会長2人、会計2人、監事2人の役員を選任しました。したがって、2001年以来、草刈りや清掃、花壇の手入れ、水やりを行い、春と秋のお祭りを主催してきた「桜の森を守る会」は、会計を含めそのまま公園愛護会に移行することとし、名称は「菊名桜山公園愛護会=桜の森を守る会」と共用することにしました。 トイレの計画は、当初、男性用と女性用の2つを考えていたのですが、最終的には市の基準から多目的用を加えることになり、合計3つのブースを備えた立派なトイレになりました。一般的に多くの女性は清潔さの観点から公園のトイレを利用しないそうですが、この公園のトイレはその様なことのないように清潔な状態を保ちたいと考えています。市では清掃を専門業者に委託しており、水、木曜日以外の毎日午前中に清掃していただけることになっていますが、私たち愛護会はそれに加えて日々の清掃を行うために愛護会専用の清掃道具も揃えました。また、休憩スペースの清掃は愛護会が自主的に随時行います。 菊名桜山公園の八重桜は当初200本を超えていたのですが、横浜市が生育状況を調査した結果、部分的に伐採する必要が生じ、現在この八重桜は180本程度に減ってしまいました。それでもこれほどの八重桜が群生している場所は全国的にも希少で、このことは多くの税金が投入された一つの理由でもありましたが、私たちはこの八重桜はもとより他のコナラやクヌギなどの樹木、草花、すべての自然を後世に継承してゆく責任を強く感じています。 また、定期的に手入れをする活動は継続し、日々見回りを行い、問題があればすぐに対応できる体制を整えつつありますが、私たちは地域の皆さんにもこれまで以上のご支援・ご協力をいただきたいと考えています。清掃等の活動への参加は自由です。愛護会の会員になる必要もありません。年に1回でもかまいませんので、お気楽にご参加ください。 活動の日時については、このホームページやトイレ棟の掲示板に掲示します。 公園の管理費用については、横浜市から鎌やほうき、熊手などは物品支援で現物での支給があり、それとは別に愛護会費という補助金を頂いています。菊名桜山公園の場合は年間3万円で、活動の際の飲物や会議や打ち合わせの資料代、行政などとの連絡に必要な切手代や交通費等に充当することができますが、私たちは、通常の公園愛護会としての活動に加え自然環境と地域の環境を繋ぐ目的で様々なイベントを企画しています。そのための資金はお祭りの際の収益や寄付から捻出し自己完結型で運営する所存です。因に、今春購入予定のテーブルや椅子の購入費用は、これまでのお祭りや寄付によって得られた資金から充当しました。
2.清掃:トイレの清掃は市が委託した業者が火・木を除いて週5日行なう。 3.施設の利用:誰でも自由に利用できるが、一定時間を団体で専有して使用する 場合には、あらかじめ公園愛護会に連絡した上、市(北部公園緑地事務所)に 「公園内行為許可申請書」を提出して許可を得る必要がある。 4.電気の使用:倉庫内に電源コンセントがあり、施設の利用に伴い電気を使用す ることが出来る。使用にあたっては、あらかじめ市に「公園内行為許可申請書 」の提出と合わせて「菊名桜山公園自家用電気工作物使用申請書」を提出して 許可を得る必要があり、また、その電力料金は使用者が支払うことになってい る。 ●休憩スペースで想定される愛護会が主催する活動やイべント 4月:『桜祭り』八重桜をめでる毎年恒例のお祭り
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(文責・清水)
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